JK社は、ドイツのバイエルン州ディースペックでヨーゼフ・クリア(Josef Klier)氏が創設後、マウスピースのトップブランドとしての伝統を築いてきました。
「W 3CM A1」はJKのラインナップでも人気のある型番の一つですが、楽器店でも品薄で入手困難なマウスピースになっています。
メーカー発表の仕様は、
リム内径 17.0mm
ボア(スロート) 4.4mm
カップ深さ 標準〜やや深め
カップの形状 Uカップ
となっています。
同じJKの「W 2CM A1」も人気がありますが、リムのサイズがわずかに小さく高音域が出しやすい「W 3CM A1」は、音色の良さと高音域の演奏しやすさを兼ね備えている素晴らしいマウスピースです。
型番の「3」の部分は、リムの内径サイズを表しています。
JKでは、リムサイズを大きい方から順に
01(18.5mm)、1(18.0mm)、12(17.75mm)、2(17.5mm)、23(17.25mm)、3(17.0mm)、4(16.5mm)
という、7種類のリムサイズが設定されています。
「3」のリムは標準的かやや小さめのサイズで、中高生や小柄な方、また唇が薄めの方にもとてもしっくりくると思います。
JKのマウスピースは特にリムやシャンクの部分で、製作時期やおそらく製作した職人さんによって微妙に形状が異なることがあります。
ハンドメイドによる良い意味での個体差とも言えますので、すでに「W 3CM」や「W 3CM-A1」を使っている方にも持ち替え用として、音色や吹奏感の微妙な違い、またリムやシャンクの微妙な違いも楽しむことができます。
型番の「C」の部分はカップの深さを表していて、JKでは深い→浅いの順に、A〜Fの6段階の設定があります。
Cカップは深い方から3番目、浅い方から4番目ということになります。標準的か、やや深めというカップになります。
「M」はカップの形状で、Uカップということを表しています。
単純なUカップではなく、JK社が音色に加え吹奏時の抵抗感や音程など、非常に吟味されたデザインをしていて、非常に高く評価されているカップデザインです。
伝統的なホルンらしい、ヨーロッパ風で柔らかくも輝かしい音色が特徴です。
JKのマウスピースは、他にVカップの「K」というカップの仕様もありますが、そちらはややダークな音色が特徴となっています。
高音域に限っては、VカップよりもUカップのマウスピースの方が比較的演奏しやすいと言われています。
このマウスピースはやや深めのカップとUカップ形状の絶妙なバランスで、良い音色と高音域の出しやすさをうまく両立しています。
カップ内には敢えて旋盤の加工跡をヘアライン状にうっすらと残してあって、カップの中で息の流れや響きが微妙に複雑な乱反射をすることで良い音色を生み出すという話も聞きます。
「A1」の部分はバックボアの変更を含めた新しいモデルについている型番です。
JKのホルンのマウスピースは2010年頃にマイナーチェンジとも言える仕様の変更があり、バックボア部分の形状と型番によってはリムの厚みが変更されました。
それ以降、型番の最後に「A1」の刻印が追加されたものが標準的なモデルになっています。
A1以前の仕様のモデルも、現在でも特注で製作してもらえるようです。
バックボアは「A1」になってわずかに広くなったデザインに変更されて、音色がさらに豊かになっているようです。
わずかに深めな「C」というカップと4.4mmのボア(スロート)との相性も良く、音色の豊かさと幅広い音域での吹きやすさを絶妙に両立しているように思います。
吹いてみるととても反応が良く、全ての音域で豊かでクリアな魅力的なサウンドが得られます。
リムの唇への感触も非常に良く、音色の美しさ、低音域から高音域までの吹きやすさ、コントロール性、音量、長時間の演奏や長いフレーズでの耐久性、イントネーション(音程)など、すべてが高レベルでバランスの取れた優れたマウスピースだと思います。
ソロ、アンサンブルから、大編成のオーケストラや吹奏楽まで、幅広く多様性のあるマウスピースです。
シャンクについてのメーカーからの正確なアナウンスはないようですが、ヨーロピアンシャンクとアメリカンシャンクの中間的なシャンクになっているようで、実際どちらのシャンクの楽器にも装着できます。
これとは別に特注で、アレキサンダーの楽器専用に合わせた「AS」というシャンク仕様のものも発売されています。
アレキサンダー、パックスマン、ヤマハ、ハンスホイヤー、コーン、ホルトン、ヴェンツェルマインル、その他にもほとんどのメーカーのホルンに装着可能な点も、人気の理由の一つだと思います。
全体に非常に良いコンディションです。ところどころ極わずかな小キズが見受けられますが、よく見ないとわからないほどでほとんど気にならないと思います。全体の銀メッキの状態も極上で、美しく光り輝いています。
リム、カップからスロート、バックボア、シャンク先端の仕上げにいたるまで、とても丁寧に製作されています。
マウスピースの表面とカップ内からバックボア、シャンク先端まで、綺麗に洗浄して適度に磨いてありますので、汚れなどの心配のまったくない清潔な状態にしてあります。