図録・写真解説本 古唐?津 唐?津焼 古唐?津焼
至文堂
1977年発行
90ページ
約23x18.5x0.6cm
監修 文化庁・東京国立博物館・京都国立博物館・奈良国立博物館
執筆・編集 河原正彦
※絶版
本書は
古唐?津にテーマを絞り、
その
岸岳古唐?津にみる唐?津焼の発生に始まり
、
文禄・慶長の役以後の古唐?津―
松浦・武雄・平戸・多久系諸窯―
松浦(寺沢)古唐?津/武雄古唐?津/平戸古唐?津/多久古唐?津、
唐?津焼の種類と名称
(奥高麗/斑唐?津/彫唐?津・彫絵唐?津/絵唐?津/三島唐?津/黒唐?津・蛇蝎唐?津/瀬戸唐?津/朝鮮唐?津/備前唐?津)、唐?津藩窯、唐?津茶陶などを
関連作品とともにカラー口絵写真28図・モノクロ写真図版とあわせて、重要文化財・在銘作品ほか145点を収録した資料本。
その作風の展開・変遷などを掘り下げて詳細に論考したもので、
本書の図版やデータは大変貴重な資料となっています。
巻末には、人間国宝・中里太郎右衛門対談も収録。
美術館・博物館所蔵の重要無形文化財、在銘名物から、
めったにお目にかかることのできない個人蔵の銘品優品を多数写真解説。
小ぶり・モノクロ図版が中心でありながら二段組テキストで、古唐?津研究の第一人者による解説論考は、
内容充実、情報満載の研究書となるもの。
唐?津焼作家、陶芸家、古唐?津、桃山茶陶、酒器、茶道具、侘び茶、骨董品愛好家等に必携の、内容充実・
古唐?津鑑賞に欠かせない知識満載の大変貴重な
絶版図録解説本。
【目次】
はじめに
唐?津焼の発生 岸岳古唐?津
文禄・慶長の役以後の唐?津
―松浦・武雄・平戸・多久系諸窯
松浦(寺沢)古唐?津/武雄古唐?津/平戸古唐?津/多久古唐?津
磁器焼成と唐?津焼の変遷
唐?津藩窯
唐?津の茶陶―唐?津と織部
唐?津焼の種類と名称
奥高麗/斑唐?津/彫唐?津・彫絵唐?津/絵唐?津/三島唐?津/黒唐?津・蛇蝎唐?津/瀬戸唐?津/朝鮮唐?津/備前唐?津
図版目録
対談 作陶の秘訣 中里太郎右衛門氏に聞く
蹴轆轤と手轆轤/織部と唐?津/たたき作り/中国伝来と朝鮮伝来/美濃釉と唐?津の釉/絵唐?津技法の特徴/李参平と多久唐?津/偽作と陶工技術/陶工苦心談/唐?津焼の魅力
【作品解説文 一部紹介】寸法掲載 ここでは略
第1図 絵唐?津松文大皿(甕屋ノ谷窯出光美術館)
小さくひきしまった高台を持ち、つば状にのびやかに広がる器形の大皿である。見込みには太い幹とそれから6つに技分かれした松を略画風に描いている。同種の意匠で器形も同じ松文皿の破片が甕屋ノ谷窯址で採集されているため、この窯の作品かと見られているが、鉄絵の発色もよく、酸化焔焼成気味のため全休に美しい赤褐色に焼き上がっている。力強い松絵文の代?表的な作品である。口径36 高9 高台径10.6cm。
第2・3図 絵唐?津蘆唐?草文壺(市ノ瀬高麗神窯 日本民芸館)
絵唐?津の優品を焼いた窯としては、甕屋ノ谷窯や市ノ瀬高麗神窯などが知られている。この表に蘆文、裏に唐?草文を描いた壺は全く同型、同意匠の壺の破片(第119図)が市ノ瀬高麗神窯址で採集されている。鉄絵の発色も明?快で力強く、口辺に鉄絵を打っている。やはり厨房で用いられた塩壺などであろうか。ほかにも同意匠の伝世品が出光美術館の蔵品として知られている。
第4図 絵唐?津曹蒲文大皿(市ノ瀬高麗神窯)
いわゆる掘出し絵唐?津の優品で、窯の中で何枚かがくっつき捨てられていたものを発掘、上手にまん中の作品を救い出したものである。鐔型の緑を持つ平皿で、見込みに描かれた大きな菖蒲文の絵付も面白い。高台は小さくまとめられていて、高台際まで土灰のまじった長石釉がかけられている。見込みの中央に重ね焼きの目跡が四ツ残り、右側の口縁部は一部が後補である。絵付の優れた作品である。
第5図 絵唐?津梅樹文鉢
唐?津の作品ではこうした深鉢型の遺例は比較的少ない。高台は低い竹の節状で三日月形に削り出され、見込みの深いたっぷりとした器胎をささえている。内外に土灰のまじった長石釉がかけられ、腰以下は露胎になっている。外側の二方に指頭画のような筆太な梅樹文内側には三方に同様な梅樹文を描く、絵付はいかにも李朝?風なもので、口縁にも鉄絵が口紅状につけられている。
第6図 絵唐?津草文茶碗(甕屋ノ谷窯)
いかにも古格を示す絵唐?津の名碗である。素地は鉄分の多いもので赤褐色に焼きあがり、高台は竹の節状に削り出されている。鉄絵で薄く草文・樹木・蔓草などを五箇所に筆少なに描いている。腰以下は露胎だが裏面では高台内まで釉なだれがあり、その部分だけがカイラギ状になっている。いかにも李朝?風な風格と魅力をそなえた茶碗である。
第7図 絵唐?津屈輪文茶(道園窯 出光美術館)
箱の蓋表に金森宗和の筆で「唐?津ぐり絵」「茶碗」と記されている。いわゆる椀形の茶碗で、胴の両側面に大きく蕨のような屈輪文を描き、口緑には口紅風に鉄絵をめぐらしている。内外に土灰釉が厚くかかり、鉄絵の発
色は赤褐色にあがっている。道園窯址から同様な屈輪文の陶片が採集されており、これもその窯の所製と考えられている。箱書きによって宗和好みの絵唐?津であったことが知られる作品である。
第9図 奥高麗茶碗(銘糸屋暦津)
唐?津の茶碗で土灰の混じった長石釉をかけた無地の茶碗を奥高麗と呼びならわしている。元?禄のころ活躍した遠州流の京都の茶人、糸屋良斎(了斎ともいう)所持と伝えるところから「糸屋唐?津」の銘がある。素直な椀形の茶碗で土灰の混じった長石釉が厚くかかり、還元?焔焼成気味のため青めに焼き上がっている。高台の削り込みは竹の節で浅く片うす高台に作られている。奥高麗の茶碗では枇杷色に赤く焼きあがっているものが多いがこれは青あがりの代?表的な茶碗である。
第10図 奥高麗茶碗(銘 秋の夜 出光美術館)
奥高麗茶碗には呉器形・椀形・熊川形・平椀形などがあるが、これは熊川形に近い形のものである。腰の張った見込みの深い茶碗で、小さ目の高台がつき、高台ぎわに深い削り込みのあとを残している。高台の畳つきには糸切のあとがあり、削り込みは深目で低い兜巾(ときん)を残し、片うす高台に削り出されている。釉は美しい枇杷色に発色しており、このわびた風情によってか、「秋の夜」の銘がつけられている。
第24図 絵唐?津唐?草文扇面形筒向付(六客 多久高麗神窯)
胴に段をつけた簡形の器形を作り、その口辺部をゆがめて扇の地紙の形にしている。胴には野葡萄かと思われる唐?草文、口辺には斜縞文帯をめぐらす。瀟洒な薄作で、絵付も優れている。同じ作品の陶片が多久高麗神窯で採集されており、のち磁器焼成で名を上げた李参平一派の所製と思われる。ほとんど無キズで伝世されているのも珍しい。
ほか
【はじめに】一部紹介
「唐?津」と呼ばれる“やきもの”は、かつて肥前と
いわれた一帯、現在の佐賀県東松浦郡・西松浦郡・
唐?津市・武雄市・伊万里市・小城郡・杵島郡・藤津
郡、長崎県の北松浦郡・佐世保市・平戸市・諫早市・
東彼杵郡などに及ぶ広い範囲の地域に散在していた百
余か所の窯で作られた陶器を総称して呼んでいる。
唐?津市の東南にそびえる岸岳(鬼子岳)の山麓にひら
かれた窯が最も古いものであるらしく、またその中心
でもあり、主として製品が唐?津の港から船にのせ各地
に送り出されたため、この呼び名が広く行なわれるよ
うになったものとみられている。そのためか関西地方
ばかりではなく、山陰や北陸地方では、ちょうど東日
本一帯で陶磁器を“せともの”と呼んでいるように
“唐?津もの”と呼び、いわゆる陶磁器商を“からつや”
と呼びならわしてきている。これは唐?津のやきものが
広く西日本の生活用品として行きわたっていたことを
示すとともに、唐?津地方が長い間、民間日用食器の一
大供給地であったことを示している。しかもそれが肥
前一帯の製品ばかりではなく、広く九州地方の陶磁器
―上野・高取・小代?・八代?など―の総称として
も用いられており、さらにこの地方の窯業が陶磁器生
産から磁器焼成へと転じ、主たる積み出し港も唐?津の
港から伊万里港へと移ってからも、相かわらず九州地
方からもたらされる生活用器としての陶磁器は「から
つもの」としてとらえられていたところも多い。
このように唐?津と呼ばれる“やきもの”は現在伝世
する作品やいろいろな窯址出土の陶片などからみて、
主として鉢・皿・小鉢や向付・茶碗・徳利・盃やぐい
呑などの飲食器類、片口や小吏・壺・広口壺などの厨
房具類など日常生活に直接必要とする雑器類を多量に
しかも長い年月にわたりて生産しつづけてきた窯であ
った。しかし、一方では早くからこうした雑器の中か
ら茶器として取り上げられているものもあり、茶陶も
生産されていて、俗に
一井戸 二萩 三唐?津
とか
一井戸 二楽 三唐?津
といわれるように“侘び”の趣味が深まり広く行なわ
れるようになると、高麗茶碗の王者といわれる井戸茶
碗などとともに、唐?津の茶碗は早くから茶趣にかなっ
たものとして選ばれるようになっている。最初はもち
ろん雑器のなかから選び出された“見立てもの”が用
いられ、さらにいわゆる茶陶としての製作が行なわ
れ、茶碗類をはじめ、伝存する数量は決して多いもの
ではないが、水指・花生・香炉・香合・茶入などがあ
り、さまざまな意匠の向付や皿・鉢類が作られるよう
になっている。
とくに江戸?時代?も後半期をむかえると唐?津茶陶への
深い関心は、他の窯業地ではあまり見られなかったき
わめて特殊な現象が見られるようになっている。それ
は“掘り出し唐?津”とか“掘りの手唐?津“と呼ばれる
特殊な一群の茶陶唐?津の存在である。
やや時代?が下るが、明?治十年黒川真頼が著述
し、殖産興業を目的として博物局から出版された『工
芸志料』には、
掘出唐?津卜云フハ 寛永ヨリ享保年間二至テ製ス(以下略)
【図版目録】一部紹介 出土窯名省略
表紙絵唐?津松に蓮花唐?草文鉢(甕屋ノ谷窯 重文)梅沢記念館
表紙裏 唐?津窯趾
絵唐?津松文大皿(甕屋ノ谷窯) 出光美術館
絵唐?津蘆唐?草文壺(市ノ瀬高麗神窯) 日本民芸館
絵唐?津蘆唐?草文壺(市ノ瀬高麗神窯) 日本民芸館
絵唐?津菖蒲文大皿(市ノ瀬高麗神窯)
絵唐?津梅樹文鉢
絵唐?津草文茶碗(甕屋ノ谷窯)
絵唐?津屈輪文茶碗(道園窯) 出光美術館
絵唐?津柿文三ツ耳壺(市の瀬高麗神窯) 出光美術館
奥高麗茶碗(銘糸屋唐?津)
奥高麗茶碗(銘秋の夜) 出光美術館
彫絵唐?津茶碗(銘華口 飯胴甕下窯)
絵唐?津草文沓茶碗(L印刻銘 甕屋ノ谷窯) 滴翠美術館
斑唐?津彫文壺
朝鮮唐?津六角面取双耳花生(藤ノ川内窯) 出光美術館
朝鮮唐?津双耳花生(藤ノ川内窯)
朝鮮唐?津茶碗(帆柱窯)
朝鮮唐?津一重口水指(藤ノ川内窯)
黒唐?津肩衝茶入(×φ印)
絵唐?津釣人物文筒向付
絵唐?津草文蛤形向付
絵唐?津草花文四方向付 五島美術館
絵唐?津飛鳥鉢文向付(内田皿屋窯)
絵唐?津柿の花向付(道園窯)
絵唐?津唐?草文扇面形筒向付 出光美術館
三島唐?津型紙刷毛目皿(川古窯谷新窯)
三島唐?津刷毛目徳利(川古窯)
三島唐?津象嵌立鵠文水指(百間窯)
二彩唐?津松梅文水甕
唐?津飴釉三耳壷(天正二十年銘) 壱岐 聖母神社
青唐?津茶碗(飯胴甕下窯)
長石釉馬盥(飯胴甕下窯)
黄唐?津馬盥(飯胴甕下窯)
彫唐?津鉄絵十字文茶碗
無地唐?津筒向付
絵唐?津壷(帆柱窯)
絵唐?津壷(帆柱窯)
斑唐?津壷(帆柱窯)
斑唐?津片口(岸岳皿屋窯)
絵唐?津片口
朝鮮唐?津一重口水指(藤ノ川内窯)
朝鮮唐?津水指(銘廬瀑) 藤田美術館
絵唐?津置文壷(市ノ瀬高麗神窯)
絵唐?津耳付片輪車文壷
絵唐?津樹木文壷
絵唐?津花唐?草文壷
絵唐?津菖蒲文壷
絵唐?津梅竹沢瀉文鉢(甕屋ノ谷無)
絵唐?津草文双耳鉢 出光美術館
絵唐?津鉢 救世箱根美術館
絵唐?津蘆文皿
絵唐?津沢瀉文四方皿
絵唐?津人物草文笠鉢
絵唐?津木賊文茶碗(甕屋ノ谷窯)田中丸コレクション
絵唐?津的射文天目茶碗 出光美術館
絵唐?沖蘆文猪口
絵唐?津唐?草文四方筒向付
絵唐?津柳樹文筒茶碗
絵唐?津小団子文四方向付(内田小峠窯)
絵唐?津橋文桃形向付
絵唐?津木賊輪達文六角向付
絵唐?津四方向付(内田皿屋窯)
絵唐?津すみれ木賊文四方向付(藤ノ川内系)
絵唐?津檜垣文四方向付
絵唐?津釣人物檜垣文四方深向付
絵唐?津松文四方皿
絵唐?津弓矢文四方皿(阿房谷窯)
絵唐?津蓮葉形向付(多久高麗谷窯)
絵唐?津文字文皿
絵唐?津三角草文向付(推の峯窯)
絵唐?津草花文四弁向付
絵唐?津鳥籠文四弁向付
絵唐?津松山文桃形筒向付
絵唐?津草文四方向付
絵唐?津水草鳥文四方向付
絵唐?津薄文平向付
絵唐?津撫四方向付
絵唐?津草文向付
絵唐?津草文皿
絵唐?津草文撫四方向付 田中丸コレクション
絵唐?津すみれ文八角向付
絵唐?津草文桃形向付(川古窯)
絵唐?津薄文四方筒向付
献上唐?津土筆文双耳水指
黄地緑彩茶碗(大川原窯)
染付菊水瑞雲文茶碗(木原山窯)
三島唐?津象嵌文三足小香炉(百間熏)
二彩唐?津松文皿(川古甕ノ谷新窯)
二彩唐?津松文徳利(川古甕ノ谷新窯)
二彩唐?津耳付花生(川古甕ノ谷窯)
三島唐?津象嵌文茶碗(百間窯)
二彩唐?津牡丹唐?草文五耳壺(川古又は焼峯窯)
奥高麗筒茶碗(銘 ねのこ餅)
彫唐?津茶碗(銘 玄海 鈑胴甕下窯)
唐?津片身替茶碗
絵唐?津山水文沓茶碗(甕屋ノ谷窯)
絵唐?津柳燕文沓鉢(甕屋ノ谷窯)
唐?津飴釉耳付水指(甕屋ノ谷窯L字刻銘)
唐?津飴釉耳付水指(甕瓧ノ谷寒)
唐?津飴釉耳け三足水指(銘福の神甕屋ノ谷窯)
唐?津飴釉瓢形水指
絵唐?津網鳥文四方香合
絵唐?津桐文香合 大和文華館
絵唐?津草文肩衝茶入 東京国立博物館
絵唐?津草文茶入
斑唐?津茶入(岸岳皿屋窯)
絵唐?津花生(藤ノ川内系 十印)
窯地唐?津平鉢
奥高麗茶碗
奥高麗茶碗(銘 さざれ石) 出光美術館
奥高麗茶碗
奥高麗茶碗(銘 安井) 大和文華館
奥高麗茶碗(銘 思ふ君)
奥高麗茶碗 出光美術館
奥高麗茶碗(銘 あけぼの)
斑唐?津徳利(藤ノ川内窯)
斑唐?津茶碗(帆柱窯出土)
斑唐?津彫文壺
斑唐?津点斑文壺(重文)
絵唐?津蘆唐?草文手付鉢(市ノ瀬高麗神窯)
絵唐?津水草文大皿(市ノ瀬高麗神窯)
絵唐?津沢瀉文大皿(甕屋の谷窯)
絵唐?津草文大皿
絵唐?津松文皿
絵唐?津松文大皿(甕屋ノ谷郷)
絵唐?津松文大皿(重文甕屋ノ谷窯) 梅沢記念館
絵唐?津薄文鉢
絵唐?津瓢形水指(牛石窯)
三島唐?津菊藤文型紙刷毛目皿(川古甕ノ谷窯)
黒唐?津天目形盃
黒唐?津梅花文木瓜形茶碗(李祥古場窯・祥古谷窯) 出光美術館
黒唐?津天目碗(藤ノ川内窯)
黒唐?津徳利(中ノ原窯)
蛇蝎唐?津沓茶碗(李祥古場窯・祥古谷窯)
瀬戸唐?津皮鯨茶碗 滴翠美術館
瀬戸唐?津茶碗 出光美術館
本手瀬戸唐?津茶碗 藤田美術館
朝鮮唐?津片耳花生 逸翁美術館
朝鮮唐?津耳付花生(藤ノ川内窯)
皮鯨ぐい呑(牛石窯)
朝鮮唐?津徳利(藤ノ川内窯)
朝鮮唐?津徳利(藤ノ川内窯)
朝鮮唐?津ぐい呑(大川一窯)
備前唐?津徳利(藤ノ川内茅ノ谷窯)
備前唐?津徳利(藤ノ川内茅ノ谷窯)
唐?津飴釉三耳壺(甕屋ノ谷窯)
裹表紙絵唐?津蘆唐?草文壺(市ノ瀬高麗神窯)
【対談 作陶の秘訣 中里太郎右衛門氏に聞く】一部紹介
蹴轆轤と手轆轤
河原 三百年以上も途絶えていた古唐?津の技法を
古窯趾の発掘陶片だとか、近隣諸外国の技法を参考
にしながら古唐?津を復活し、それを現在に生かして
いる中里家に伺い、本日は十三代?の中里太郎右衛門
先生にお話しを伺いたいと思います。まず、最初に
唐?津の中で最も重要な成型技法というのは、やは
り、「ロクロ」だと思いますが、その点については
いかがでしょう。
中里 岸岳の時代?から使われているのは足で蹴
る、「蹴ロクロ」ですが、その特徴というのは、構
造がかがみという上板と蹴り専門の蹴り板と二つに
分れており、足で蹴って、回転を自分の思いのまま
に継続できるということです。反面「手ロクロ」の
場合は穴に棒をさし込んで回転させる関係上、大き
い物は手につかえ、結局、助手に別の「ロクロ」を
廻してもらって、それを連動させて回転を続けると
いうことになります。「蹴ロクロ」の場合は、高さ
が1メートル以上もあるような甕などを作る場合は
別ですが、たいていの物は自分一人で蹴ってできる
わけです。それが、「蹴ロクロ」と「手ロクロ」の
違いかと思います。
私は、最近、東南アジアに行ってきましたが、こ
こでは南中国系の「ロクロ」の上板を足で蹴って使
っています。あと一つは、電車のつり皮みたいな物
にぶらさがった助手に蹴ってもらう方法です。(以下略)
【著者について】河原正彦
日本の美術史学者・陶磁器研究者。専門領域は文化史学、美術工芸史、東洋陶磁史など京都府立総合資料館資料部主事。京都国立博物館学芸課工芸室、研究職文部技官、工芸室長、学芸課学芸課長、滋賀県立陶芸の森館長、京都国立博物館名誉館員などを歴任。
工芸品全般、とりわけ意匠としての文様に造詣が深く、陶磁器に関しては唐?津焼・伊万里焼・中国陶磁に関する共著著作も多数手掛けた。