バルビローリのモーツァルト、ワーグナーがあった!
モーツァルト:交響曲第40番、
ワーグナー:ジークフリートのラインへの旅、ジークフリートの葬送行進曲、ブリュンヒルデの自己犠牲
バルビローリ&ハレ管、ヴェルッキ(1964年)
ジョン・バルビローリ[1899-1970]とハレ管弦楽団、1964年1月21日のコンサート。
モーツァルト40番とワーグナー『神々の黄昏』から(3曲)のプログラム。
BBCによる、コンサート本番前の録音テープを使用。
テスタメントが発掘するまで未公開、世界初出だった音源です。
バルビローリにはモーツァルト40番の商業録音はありません、
62年にBBCのスタジオで行った放送録音がBBCからCD発売されていたのみです。
この64年録音では、持ち前の真摯な情熱のもと、快適なテンポで、柔らかなニュアンスもまじえ、雄弁な主張を展開。
音のバランスにも配慮したじつにコクのある演奏になっております。
もう一方のワーグナー。
バルビローリとワーグナーの関係は古く、指揮者として初めて演目にとりあげたのは1927年のことでした。
管弦楽演奏によって培われたオーケストラ・コントロールは、ワーグナー演奏に必要不可欠な要素であり、
バルビローリが元来もっているオペラティックな要素とあいまって、ここでも理想的な演奏が展開されています。
録音こそ少ないもの彼のワーグナーが高い評価を得てきたことが納得できましょう。
コンサートの終曲『ブリュンヒルデの自己犠牲』には、ソプラノのアニタ・ヴェルッキ[1926-2011] が登場。
ヴェルッキはフィンランドのドラマティック・ソプラノとして活躍、1961年にロンドン・デビューをし、
1963/64にはバイロイトでブリュンヒルデを歌うなど、
フラグスタート、ヴァルナイ、メードルの後釜は
ビルギット・ニルソンしかいないという世界中の悲観論のなか台頭してきた歌手です。
バルビローリのワーグナーに対する愛情と、ヴェルッキの素晴らしい歌唱があいまって、
ワーグナー生誕150周年記念に相応しいイヴェントになっています。
「一貫して音楽的、情熱的、そして高貴な歌唱であった。・・オーケストラは驚くべきパワーと音響で、スリリングなほど壮大さを描き、それでいてスコアの精密さもよく引き出していた」(マイケル・ケネディ、デイリィ・テレグラフ紙マンチェスター版)
ハレ管弦楽団は1858年からの歴史をもちます。
バルビローリはこの管弦楽団の音楽監督を1943年から亡くなるまで務め、
当時存亡の危機だったともいえるオーケストラを見事に立て直し、世界的なオーケストラへと成長させた存在です。